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難題ラボ 第1回|電磁誘導加熱(IH)プレス機が変えるFPC積層の常識

難題ラボは、山下マテリアルが日々向き合う「ものづくりの難題」と、その解決に挑む取り組みを、皆さまへお届けする技術コラムです。
第1回は、当社が新たに導入した電磁誘導加熱(IH)プレス機をご紹介します。

はじめに ― なぜ今、積層プレスなのか

多層フレキシブル基板(FPC)の品質は、内層と樹脂(ボンディングシート)を貼り合わせる積層工程で大きく左右されます。微細化・高密度化・高周波対応が進む昨今、設計や材料だけでなく「どう熱と圧力をかけるか」という加工技術そのものが、製品の歩留まりと信頼性を決める時代になりました。

そこで当社が着目したのが、従来のホットプレスとは加熱原理がまったく異なる、InduBond社の電磁誘導加熱(Induction Heating, IH)方式のプレス機です。

従来の積層プレスが抱えていた「難題」

一般的な多段ホットプレスは、オイルやヒーターで加熱した熱板から積層材へ熱を伝導させて樹脂を硬化させます。この方式には、構造的にいくつかの課題がありました。

熱伝導の遅れと温度ムラ

熱容量が大きく、プログラム通りの昇温カーブを正確に維持しづらい。

高Tg・厚物での品質ばらつき

硬化条件がシビアな材料ほど、温度ムラが樹脂フローや、フィルや反りに影響する。

熱伝導の遅れと温度ムラ

外側から内側へ熱が伝わるため、スタックの中心と外周、上下で温度プロファイルに差が生じやすい。

大きなエネルギー消費

装置全体を加熱・保温するため、消費電力が大きい。

つまり「全層を、同じタイミングで、同じ温度に」加熱することが、長年の難題でした。

解決の鍵 ― 電磁誘導加熱(IH)

IHプレス機は、電磁誘導によって積層材(セパレータプレート)そのものを直接発熱させます。

これにより、スタックのX・Y・Z すべての方向で熱遅延のない均一加熱が実現します。各層が同時に、同じ温度プロファイルをたどるため、樹脂の硬化が揃い、品質の安定につながります。この技術は、その革新性が評価されIPC APEX EXPO 2020 イノベーションアワードを受賞しています。

IHプレス機の主な特長

項目特長
加熱方式電磁誘導により積層材を直接発熱。熱伝導遅れがなく、全方位で均一加熱。
温度再現性プログラムした昇温カーブを高精度に追従。層間の温度差を最小化。
省エネ性能従来の多段プレス比で約70〜80%の省エネ。CO₂排出削減に貢献。
高温対応最大450℃(842°F)まで対応し、特殊材料の積層も可能。
加圧・真空最大75kg/cm²(1066PSI)の高均一油圧と、シングルフレーム構造による高真空。

当社の製品づくりにどう活きるか

この均一加熱と精密な条件制御は、当社が手がける次のような製品で特に効果を発揮します。

多層フレキシブル基板

―層構成が複雑でも、層間の硬化ムラを抑制。

高Tg材料・液晶ポリマー材

―シビアな硬化条件にもプログラム制御で対応。

難しい材料・難しい構造ほど、加工で差がつく

―IHプレス機の導入により、お客様のより高い性能・品質要求にお応えします。

まとめ

多層フレキシブル基板の品質を左右する積層工程では、「全層を同時に均一加熱する」ことが長年の課題だった。

電磁誘導加熱(IH)プレス機は、基板積層材を直接発熱させることで均一加熱・高再現性・大幅な省エネを同時に実現します。

当社はこの設備を活かし、高難度の基板づくりと環境負荷低減の両立に取り組みます。

日本国内で初めて設置された電磁誘導加熱方式のラミネートプレス機です。